「言葉の免疫」を獲得すると、世界が少しやさしくなる

「かわいい」という言葉を、あなたは普段どれくらい使っていますか?
個人的な話で恐縮ですが、私はこの言葉をあまり使ってきませんでした。
使わなかったというより、正確には「使えなかった」と言ったほうがいいかもしれません。
「かわいい」と思うことはあっても、それを口に出すのがなんだか照れくさくて。
誰かが「かわいい〜!」と感情を素直に表現しているのを見ると、すごいなと思う一方で、どこか自分とは違う世界の人のように感じていました。
言葉にすることが、どうにも不自然に思えていたのです。
でも、そんな私の中で大きな転機が訪れました。
それは、子どもが生まれたことでした。
子どもによって広がった「言葉の回路」
子どもが生まれてから、自然と「かわいい」という言葉を使うようになりました。
赤ちゃんの小さな手や寝顔を見るたび、心の底から「かわいい」と感じ、その気持ちが自然と口からこぼれるようになったのです。
「かわいいって、こうやって使うんだな」と、体感としてわかってきました。
これまで使い慣れていなかった言葉も、毎日繰り返すうちに、自分の言葉として馴染んでいきました。
さらに不思議なことに、その言葉の対象も少しずつ広がっていきました。
子どもだけでなく、ぬいぐるみやキーホルダー、小さなおもちゃや動物の写真、あるいは他人の子どもに対しても、ごく自然に「かわいいね」と言えるようになったのです。
昔の自分では考えられないことでした。
以前の私は、心の中では「かわいい」と思っていても、それを言葉にするなんて恥ずかしくてできませんでした。
けれど今では、言葉をかけることに何のためらいも感じていません。
これは、自分の中に「ある種の免疫」ができたからなのだと思います。

自分の中では劇的な変化でした
言葉にも「免疫」がある
風邪やインフルエンザに対する免疫のように、言葉にも“慣れ”という形の免疫があるのではないかと感じるようになりました。
最初は違和感があっても、繰り返し触れたり使ったりしていくうちに、その言葉は自分の一部になっていきます。
違和感は徐々に薄れ、やがて自然と使えるようになる。まるで筋トレのような感覚です。
この現象は「かわいい」だけに限りません。
「ありがとう」や「ごめんね」、「助けてほしい」や「うれしい」といった言葉も同じです。
どれも、本当は大切であたたかい言葉なのに、言葉にすること自体に抵抗を感じる人は多いと思います。
でも、それは単に
言葉に“慣れていない”だけ
なのかもしれません。
そしてこの「免疫」は、どんなきっかけからでも獲得できます。
私の場合は、子どもという存在がその扉を開いてくれました。
環境が変わったことで、自然と新しい言葉や感情が引き出されるようになったのです。
世の中のほとんどは「慣れ」でなんとかなります
「かわいい」に限らず、私たちは多くのことに対して“苦手意識”や“気恥ずかしさ”を持っています。
でも、実際にやってみると、案外どうってことなかったりします。
- 人前で話すのが苦手だったけれど、何度か経験を重ねるうちに落ち着いてきた
- 初対面の人と話すのが怖かったけれど、仕事で会話を繰り返すうちに自然と慣れた
- SNSで発信するのが恥ずかしかったけれど、思い切って投稿したら反応がもらえてうれしかった
こんな経験、きっと誰にでもあるはずです。
つまり、大切なのは“最初の一歩”を踏み出すこと。
最初のひと言を口にする勇気や、最初の投稿をする勇気。
ほんの少しだけ勇気を出せば、世界は思ったよりやさしく見えてきます。
「免疫」ができれば、自分の世界が広がります
言葉だけでなく、行動にも、人間関係にも、挑戦にも「免疫」のようなものがあると感じます。
最初はぎこちなくていいのです。気恥ずかしくても、怖くても大丈夫。
何度か繰り返すうちに、心も体も自然と慣れていきます。
そしてその慣れが、“自分の世界を広げる力”になっていくのだと思います。
面白いのは、自分が得意だと思っていたことの中にも、実は免疫が足りていなかったと気づくことがある点です。
逆に、「これは自分には向いていない」と思っていたことの中に、じつは大きな可能性が眠っていたりします。
とにかく、免疫を獲得しましょう
きっかけはなんでも構いません。
大きな目標を立てる必要もありません。
小さな「言葉」一つからで十分です。
まずは一歩、踏み出してみましょう。
少しずつ慣れていけば、それでいいのです。
かつて「かわいい」と言えなかった私が、今では自然に「かわいいね」と声をかけるようになりました。
人生、何がきっかけで変わるかわかりません。
だからこそ、こう思います。
とにかく、“免疫”を獲得しましょう。
世の中、思っているより大したことありませんから。